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『隠れズ』の歩み

2013年4月、東京レインボープライドのスタッフに「パレードを歩いてみないか」とお誘いいただいたことをきっかけに『隠れズ』は誕生しました。

 

きっかけ2013

 東京レインボープライド開催2年目の2013年、当時は現在のような参加人数ではなかったので「もっと多くの方に参加してもらいたい、GよりもLが少ないのでLの参加者を増やしたいのです、歩いてみませんか」と、TRPのスタッフが声をかけてくださいました。当時の私はLが100人規模で集まる企画のスタッフをしていたので、多くのL参加者を集められるだろうと期待されたのだと思います。

 

クローゼットというハードル

 LやBの友達が大勢いて、パーティーやイベント等を企画したり参加するアウトゴーイングな仲間もいます。しかし、いつも遊んでいるメンバーの中に、年に一度の大イベントであるプライドパレードに積極的に参加している人はどれだけいるだろうか…ほんの数人、多くても10人程度でした。当時一緒にイベントを企画していたメンバーに、パレード参加のお誘いを受けたことを相談してみました。「パレードか……。みんな、クローゼットだし…ちょっと…」予想通りの気ののらないリアクションでした。LGBTオンリーのクローズドイベントは自ら企画もするし気軽に参加できるのに、LGBTQを公に銘打っているオープンなイベントに関しては「誰に見られるかわからない」と躊躇してしまうのです。

 

折角のご縁を無駄にしたくない

 折角誘ってもらったのに、このご縁を無駄にするのはあまりに勿体ない気がしました。なんとか歩ける方法はないものか…。パレードの参加を躊躇してしまうみんなの意見を聞くと「職場の人やカムアウトしてない知人に見られたらどうしよう?」という事だけでした。それなら仮装して個人を特定できなくすれば心配や不安も解消されクリアできるはずです。

 しかし「日常的に歩いている渋谷の街を歩くだけのことなのに、パレードというだけで、尻込みしてしまう現実」がひっかかりました。「よく考えたら、何にも悪いことしてないのに顔がバレなければいいっておかしくない?バレるとかバレないっておびえてる人がいることもおかしいし、折角勇気を出して一歩を踏み出すのだから、コソコソビクビクしながら参加するのではなくもう少し前向きに歩きたい!」と思いました。何日も考えた末に出てきたのが「セクシャリティをオープンにできないなら、カミングアウトできない人がこんなにもいるってアピールすればいいじゃない?」ということでした。「街を歩くだけなのに、セクシャルマイノリティというだけでこれだけガードしなければならない人が沢山いることを知ってもらう」ことは私たちクローゼットがプライドパレードを歩く意義になる。そんな大義名分を考え付いたところで、今までパレードに参加しようと思えなかった人達のハードルが簡単に下がるとは思えませんでしたが、まずは自分自身が歩きだすことから始めないと何も変わらない。

 今は仮面が要るかもしれないけれど、いつか仮面が必要となくなる日を願いつつ、先ずとにかく歩くことからはじめようと参加を決めました​​。

 

 参加を決めたものの、当時、私がパレードに抱いていたイメージは「オープンにしている人たちがLGBTとしてプライドをもって堂々と歩く場」でした。私たちにようなクローゼットでキラキラとは無縁でガチガチに顔を隠して「クローゼット」であることをアピールする団体って、プライドパレードの趣旨に反するのではないか。晴れの場なのに、堂々と歩かないこんな団体が参加してかえってご迷惑では?と心配になり、誘ってくれたTRPのスタッフに、こんなコンセプトでも良いものだろうかと確認しました。そしたら、前年度「せっかく勇気を出して出てきたのに、周りの雰囲気に圧倒されて歩かずに帰ってきてしまった…」という参加者のメッセージがあったとのことで、その勇気と行動を無駄にしないよう是非そのコンセプトで進めてほしいとの応えが届きました。

 

隠れズ誕生

 コンセプトは『クローゼットだからなんだ!仮装して歩こ!』で、決まりましたが、ぱっと見て判る覚えてもらいやすいキャッチーなネーミングが必要でした。『隠れズ』という素晴らしいネーミングを考えついた友人のセンスに脱帽。今、多くの方に認知いただけるようになったのはこのネーミングのおかげだと感謝しています。

 

『隠れズ』

「隠れず」隠れるの否定形

「隠れS(ズ)」”隠れ”の複数形

「隠れ(ている)レズ」

3つの意味を含んだ造語です。

 

「隠れているひとたち隠れずに生きられる社会を願って歩く」がコンセプト。

チーム名とコンセプトが決まったところで急いでTwitterアカウントを作成し、FacebookやSNS等で告知を開始しました。 TRP、LGBT関係団体、友人たちが『隠れズ』拡散に協力してれました。

TOKYO RAINBOW PRIDE2013 (パレード参加者2,100人、イベント参加全体人数12,000人)

『隠れズ』デビュー
 2013年4月28日、全くの1からのスタートでしたから、不安のままパレード当日の朝を迎えました。 当時は今ほど賑わっておらず、ましてや朝一番、人もまばらな中、ドキドキしながら隠れズと書いたボードを手にイベント広場に立ちました。

クロ-ゼットの自分が公共の場所で行われるLGBTのイベントでLとして看板持って立っていることや、誰もこなかったらどうしよう…という不安が入り乱れ、何分が何時間にも感じられました。友達何人かは来てくれるはずだから大丈夫、自分に言い聞かせてじっと待っていると「あの…隠れズさんですか」ぽつぽつと声をかけてくれる人が現れました。驚いたことに集合場所で声をかけてくれた半数以上が隠れズのTwitterをみて参加しようと決意された初対面の方でした。全国から50人も集まってくれたのです。

 「今まで歩いてみたかったけれど、一歩踏み出せなくて・・・。でも告知を見て自分も歩いてみようと勇気を出して仙台から出て来ました!」「自分はクローゼットじゃないしオープンにしているれど、賛同するよ。一緒に歩こう!」「ノンケだけれど、隠れズを応援したいから参加します!」多くの声と共に、私たちは第一歩を踏み出しました。 
メンバーの大半がパレード初参加者でしたから、かなり緊張しながらのスタート。当日まで抱いていた様々な心配をよそに隠れズたちは笑顔で手を振りながら満面の笑みで最後まで歩き、ハイタッチで迎えられゴールしました。 


 あの日の青空にたなびいたレインボーフラッグ、沿道からの応援、仲間達の笑顔、パレードを歩いたからこそ見ることができた景色を忘れることはありません。

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成3年目 2015年4月26日 パレード参加者3,000人、フェスタ2日間の動員数55,000人)

 渋谷区で”自治体による日本初の同性間のパートナーシップを認める条例”「同性 パートナーシップ条例」3月31日に区議会で成立(4月1日施行)東京レインボープライドはその渋谷区で開催されるのだから、これは盛り上がるだろうとワクワクしつつ会場へ。

 石の上にも三年。折角3年目を迎えられたのだから、何か新しいことをしようと考え、パッと見て伝わる隠れズのロゴを友人のデザイナーに発注しました。「隠れズ」のボードをかかげて歩いている間は認識してもらえるけど、パレードが終わった途端何のメッセージ性もなくなり、ただの来場者となってしまうことが残念だったからです。パレード中もフェスタの会場でも目立つように、胸に大きなロゴ、背中にスローガンをプリントしたチームTシャツを作りました。このロゴTシャツのおかげで沿道の皆さんに一層応援していただけるようになり、一体感が生まれました。漢字のロゴと英語のスローガンは多くの外国人から応援の言葉をかけてもらえました。

 3年前に勇気を出して初めてパレードを歩いた隠れズメンバー数人から、「みんなが安全に歩けるように今年はボランティアスタッフとして車道でみんなを誘導します」「今年はフロートに上がるから一緒には歩けないけど隠れズスピリットは胸に」と素敵な報告がありました。この2年間隠れズとして共に歩いてきた仲間が今年一緒に歩けないのは寂しいけれども、とても嬉しくほっこりしました。あの日パレードに来ることも歩くこともドキドキしていたのにと。隠れズがそんなステップになれたことが本当に嬉しかったです。

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結成4年目 2016年5月8日 パレード参加者4,500人、会場来場者数70,500人

 前年のパレードからの1年間の間に2015年6月26日にアメリカ全土で同性婚が合憲となり、日本の自治体でもパートナーシップの対応に乗り出すところが増え、同性婚人権救済の申立(2015年7月7日)が行われ、メディアでもLGBTが盛んにとりあげられるようになりました。「LGBT元年」などと表現されたりまします。LGBTに爽やかな風が吹いている気がする中での東京レインボープライド。代々木の会場に到着して、協賛社のブースも来場者の賑わいもこれまでにない景色を見ました。

 隠れズは4年目を迎え、告知をする前から問合せが入るようになりました。まだ何の準備も始めてない時期に久し振りに会った友人が「パレードの誘導スタッフをするのですが、下に隠れズTシャツを着たいから買います!」と言ってくれました。結成当時から一緒に歩いていた若者が「今年は彼女も一緒に」この1年の間にできた彼女を紹介してくれました。これまでずっと(パレード全ルートの)沿道を並走しながら応援くださっていた大好きなカップルが今年は車道から同じ景色を見ながら歩きました。去年、パレード終了後の飲み会で「来年は歩きます!」と宣言したバリバリのクローゼットがその約束を果たしました。私が初めてカミングアウトした大学時代の友人(アライ)が、今年も遠くから駆けつけてくれました。新幹線で駆けつけた友人は「LOVE WINS」と描かれたレインボーのボードを途中降ろすことなくかかげつづけました。ドキドキデビュー組も、4年間ともに歩いている仲間も、みんな隠れずに歩きました。

結成5年目 2017年5月7日 (パレード参加者5,000人 フェスタ来場者100,000人)

 東京レインボープライドになって6年目、隠れズも5年目となりした。この1年で”LGBT”を取り巻く環境の変化を感じていましたが、代々木のTRPフェスタ会場に到着して、想像をはるかに超える変化を目の当たりにしました。「CHANGEー末来は変えられるー」というTRP2017のテーマがそのまま具現化されていると感じました。2015-16年は「LGBT元年」などと言われ、LGBTの文字をいたるところに見かけるようになり、もはや現象のような印象があり、逆にそれが単なる”ブーム”だとしたら残念だと思っていたのです(クローゼットの中の環境はさほど大きくは変わった印象はなかったので)。フェスタ1日目の盛況を見た瞬間、それは無駄な思い過ごしだったと気付きました。もう”当事者”だけのお祭りではなく、まさにフェスティバル。末来は変えられる!です。

 隠れズも(Tシャツのおかげだと思いますが)周知され、多くの方にお声かけいただきました。隠れズのCHANGEは、セクシャリティをオープンにされている方、アライさん、Wマイノリティなどクローゼットレズビアン以外の多様な方々が「いまは仮面が必要かもしれないけど、いつか仮面が必要となくなる社会」を願い、共に歩いてくれるようになったことです。

パレードに参加していない方にも、メディアを通して少しでも多く私たちを届けられるようにと準備したプラカードも沢山写してもらえました。

これまでパレードに参加できなかったクローゼットの方からの「来年は歩きます!」の参加表明は何年経っても嬉しい。

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結成6年目 2018年5月6日 (パレード参加者7,000人(37フロート)5/5-6フェスタ来場者140,000人)

 代々木会場&パレードも共に過去最大の盛況!2017年度の賑わいでも圧倒されたのに、パレードの出走フロートも昨年の23チームから一気に37チームまで増え、その盛り上がりにただただ驚くばかり。会場は歩けない程の混雑でした。

 2018年度の隠れズといえば、クローゼット当事者以外の参加が増えました。隠れズは、完全クローゼットが多いため、周りに”アライ”があまりいませんでした。パレード自体「誰かに見られやしないか、ばれたらどうしよう」とヒヤヒヤしながら参加してるレベルのクローゼットが、気軽に「パレード歩かない?」と”ノンケ”を誘える訳もなく…。そんな隠れズのメンバーが勇気をもって姉妹にカミングアウトし、その姉妹とお子さんとお子さんの友達まで一緒に歩きました。隣で元気いっぱい歩く子どもたちが、沿道の子どもたちとハイタッチしてるなんて…結成当時は想像すらできなかった光景に熱いものがこみ上げました。パレード終了後、別のメンバーから「沿道で見てた妹家族が来年は一緒に歩きたいからTシャツ予約するって言ってた」とうれしい連絡をもらいました。

 社会の急流から考えると「なんだそんなこと?」というくらいゆっくりゆっくりではありますが、クローゼットの中も確実に変化しています。

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結成7年目 2019年4月28日 (パレード参加者11,000人(40フロート!)4/28-29フェスタ来場者200,000人)

 TRP2019のテーマは、1969年NYで起きた「ストーンウォールの反乱」から50年を記念して「I HAVE PRIDE」(あるがままを誇ろう。)でした。1970年「ストーンウォール事件」の1周年を記念してNYで始まったPRIDE PARADEが、世界各地に広がりこの東京でのプライドパレードにも繋がっているのです。隠れズ・Kはこれまでプラカードを持って歩いていましたが、ストーンウォール50周年記念のお祝いの意味もあり、今年は旗棒を買ってレインボーフラッグを振りながら歩くことにしました。晴天にたなびくレインボーフラッグが気持ちよくて、朝いちガラガラの会場で振りまくっていたら、写真や動画を撮られたり、取材を申し込まれたり。

 2019年の隠れズのPRIDEと言えば、アライが増えたこと。隠れズのメンバーはクローゼットが9割なので周りにカミングアウトしている人が少ないのです。必然的にアライの身内や友人がいる人も少ない。5年目までアライと言えば、Kの大学時代の友人1名が結成当初から一緒に歩いているだけでした。それが、2016年に隠れズに賛同してくださった方のご家族が、2017年度はメンバーのお姉さん(&その娘と娘の友人)、今年はまた別のメンバーの妹さんが一緒に歩いてくれました。5年目までずっと唯一のアライメンバーだった友人が「アライを連れてく」と言って今年は夫を連れてきて一緒に歩いたのも嬉しかった。

 隠れズで歩くまでは会場に来ることすらためらっていたガチガチのクローゼットも少なくないことを考えると、家族が一緒に歩いてくれる日がくるなんて。正に「I Have Pride」でした。

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結成8年目 2020年4月26日 (オンライン おうちでプライド2020)

例年のように準備をしていたら、新型コロナウィルス感染症の影響でTRP2020の中止が発表された。​緊急事態宣言。

 

結成9年目 2021年4月24日 (オンライン おうちでプライド2021)

2年連続のリアル開催中止。おうちでプライド。

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結成10年目 2022年4月24日 (パレード抽選により2000人限定、会場は事前申込制)

 隠れズ結集のアナウンス、ギリギリまで迷っていました。パレード自体、抽選申込制(2000人限定)ということ、主宰Kが落選したこと、そして、何よりもコロナのことを考えて、積極的な広報も呼びかけもしないことにしました。それでも隠れズTシャツを着て駆けつけてくれたメンバー達と3年ぶりに再会ができました。

 Tokyo Rainbow Prideになってからのパレードはずっと晴天でしたが、今年は珍しく雨が降りました。自分(主宰K)の落選がわかった瞬間こそ残念な気持ちになりましたが、「こんな時だからこそ普段できないことをしたい」落選した仲間と傘をさして沿道に立ちました。

 パレード参加に当選したTシャツ組メンバーはたった一人でした。ひとりでも、隠れズブルーがパレードを歩き、たすきをつなぐことができて本当に良かった。

 沿道からの応援は10年ぶりでした。全フロート、先頭フロートから最終フロートまで、歩いた2000人全員に声援を送ることができました。応援しているつもりが、歩いている方々から、フロートに乗っている方々から、「隠れズ!」と多くの人に声を掛けてもらって、沢山パワーをいただきました。​パレードを歩いたものにしか見えない景色があるけれど、沿道から見る景色もいいものでした

結成10年目 2022年11月12日 東京トランスマーチ(1,000人)

 

 隠れズメンバーは、関東圏だけでなく、全国にいます。隠れズが公式に結集をかけるのは、年に一度、Tokyo Rainbow Prideのみ。それ以外のプライドパレードは、各自の自由意思で参加しています。各地のパレードの様子をSNSやネット記事等で見ているときに「あ、隠れズTシャツ発見!○○ちゃんだ」ということがよくあります。そんな感じなので青いTシャツがどっと集まるのは、今のところTRPのみなのです。今回のトランスマーチについても、集合はかけませんでした。トランスを取り巻く状況に何かしらの思いがあって自然に集まるメンバーがいれば共に意思を示したいと思ったからでした。

 会場につくと、メンバー何人かがいました。なぜ今日参加したのか、トランス差別についての思い等を話しながらコースを歩きました。TRPのように沿道にレインボーフラッグがたなびいてたり、応援の人たちが連なってたりはしません。時折、プラカードを持った人がポツンと立っています。レインボーパレードのように「Happy Pride」とハイタッチするようなことはありません。互いにほぼ無言だけど、その意思表示に勇気づけられる。新宿駅南口や靖国通りや、信号待ちの人たちがポカンとしてる横をトランス差別反対のプラカードを持ったひとたちが通り過ぎていく。多くの人たちはトランスフラッグを知らないだろうし、トランス差別ってなに?という感じだったのではないだろうか。なに?と思われても、こうして見せること、反対の声をあげること、アライとして連帯すること、意思表示をすることの意義を強く感じました。トランス差別反対。

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本当の意味で「仮面が必要となくなる社会」を願い『隠れズ』はこれからも、歩き続き続けます。

【隠れズK】

 

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NO MORE LIES

偽らず

NO MORE HIDING

隠れず

 

We are invisible minorities stepping out of the closet.

存在が見えないマイノリティーである私たちは扉を開け一歩踏み出す

 

No more lying to our loved ones.

これ以上、大切な人たちに嘘を重ねなくていいように

 

No more hiding in the closet.

これ以上、本当の自分を隠さないでいいように

 

Let's make ourselves visible.

私たちの存在がみんなにみえるように 


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